中国は、海外のゲーム会社にとって参入が難しい市場として知られてきた。しかし、弊社の最新の市場調査レポートでは、輸入ゲームに対する中国当局の規制認可の改善が始まっている。弊社はここ数年間の海外デベロッパーに対するゲーム認可状況の変化を示すため、2009年から中国のゲームライセンスを追跡し、生産国、ジャンル、デベロッパー、国内パブリッシャー、プラットフォームなどに基づいてデータを集計した。

中国のゲーム輸入に関する弊社のリサーチでは、日本が生産国トップであること、そして日中の二国間関係の多大な重要性も認められた。Nikoの最新レポート「中国のゲーム市場で日本が最大シェアを握る理由( What’s Behind Japan’s #1 Share in China’s Games Market )」では、中国ゲーム市場における日本の驚異的な成功の理由と、中国ゲーム業界が日本からどのような恩恵を受けたかを探っている。

中国の法律では、中国でパブリッシュされるすべてのデジタルゲームは、ゲームを取り締まる当局から発行番号(ISBN)などを含むライセンス認可を受けなければならない。現在の担当当局は国家新聞出版署(SAPP)で、2018年のデジタルゲーム規制は当局が行なった。ヨーロッパや米国の多国籍ゲームデベロッパーとパブリッシャーは、中国のゲーム会社がこの業界に参入するずっと以前からゲーム開発に携わっている。

この20年間、中国のデベロッパーは主にアートやQAサービス の委託先から完全なゲームデベロッパーおよび運営側へと成長した。ゲームサービスに携わる国内企業の収益だけでも毎年330億ドルを超え、この額は増加の一途を辿っている。Electronic Arts社のようにゲーム開発においてより長い歴史を誇る多国籍企業があるにも関わらず、海外のゲームタイトル(輸入)に比べて国内で開発されたゲームがライセンス認可を受ける数は格段に多い。ほとんどの国ではどのゲームもパブリッシュを許可しており、成功を決めるのはゲームの需要であるため、これは非常に不公平だと言う意見もある。

貿易争議は別として、中国には国が決めた方針があり、国内外の企業を問わず、すべての企業がそれに従わなければならない。ライセンスを求める主な理由は、ゲームのコンテンツを制限し、許可できると判断されたものだけに限定して、危険性のあるものや不適切と思われるコンテンツを拒否するためである。規則では、血、血糊、特定の地図の描写、言語の使用などが禁止されている。中国でゲームをパブリッシュしたい場合は、どの企業もライセンス認可を申請しなければならず、それを申請できるのは株式の過半数を中国が所有する会社だけである。

Niko Partners は2009年から中国のゲームライセンスを追跡しており、生産国、ジャンル、デベロッパー、国内のパブリッシャー、プラットフォームなどに基づいてデータを集計している。このデータは中国政府が公表したデータを基盤にしたものだが、ゲームライセンスのピークは2017年だったことがわかる。20166月までは、モバイルゲームはパブリッシュ前のライセンス認可を必要とせず、中国では2014年までコンソールとコンソールゲーム の発売は禁止されていた(つまり、これらのゲームはライセンス申請をしなかった)。20166月以降、コンソール、PC、モバイルゲームの3つのプラットフォームすべてがパブリッシュ前にライセンス認可を必要とするようになり、2017年のデータはこのライセンス数を反映している。2017年の認可数の増加は規制変更によるものなので、今後このようなピークが起こることはないと言える。

2018年には規制当局の権限見直しがあり、その結果ゲームのライセンス承認が9ヶ月間凍結された。これについてはNiko Partnersが詳細に記述している。2018年はライセンス認可の期間が3ヶ月しかなかったため、認可されたゲームは非常に少なかった。2019年、ライセンス認可が再開されたものの、米中の貿易戦争が背景にあった。

デジタルゲームは、米中貿易戦争の影響を直接受けたわけではないが、経済的な緊張状態がゲーム認可数の減少に繋がった可能性もある。偶然だが、『フォートナイト』のように世界的にヒットしたゲームも含め、2019年に中国でライセンス認可されたアメリカのゲームは以前より少なかった。もう一つ政治的に考慮すべき点として、2017年初頭からはライセンス認可された韓国ゲームが一つもなく、 その理由が公表されていないことが挙げられる。正式な理由が公表されていない場合、ライセンス認可を妨げる政治的問題が介在していることが多い。世界的に大反響を呼んだ韓国の『PUBG』は中国でライセンス認可されなかったが、同様のゲームで中国のTencent社による Peacekeeper Eliteはライセンス認可されている。

中国市場に参入する海外のゲーム企業

2019年の12ヶ月間にライセンス認可を受けた,185の海外ゲーム中、米国のゲームは17タイトルに過ぎず、2017年の81タイトルから大きく下落している。2018年はライセンス認可期間が3ヶ月しかなかったが、米国と日本はそれぞれ15タイトルのライセンスを認可された。しかし、2019 年には日本は63タイトルのライセンスを取得している。反して中国のゲームでは1,385のタイトルが2019年にライセンスを取得しており、その数は海外タイトルの8倍近くになる。2019年には 低品質やコピーゲームのライセンス認可を停止するとの発表があり、それ以前に認可されていた多くのラインセンスがこれに当たるため、ピーク年としての2017年の位置付けはそのまま継続し、今後のライセンス数はそれより低いものになると予想される。

Niko Partnersは今年、平均20から30タイトルの海外ゲームが毎月認可され、合計で240から360タイトルの新しいライセンスが認可されると予測している。ここで重要なのは、輸入ゲームのライセンスの割合と海外ゲームによる収益の割合が一致していない点である。収益率の方がずっと高いのだ。例えば、2018年のゲーム収益の60%が海外のPCゲームによるものだったが、 市場で手に入るゲームや新たにライセンス認可されたゲームは60%をはるかに下回る。また、Steamの国際版はPCゲームで人気のプラットフォームで、これが中国でブロック解除されていることにも注目する必要がある。海外のゲームデベロッパーは、認可プロセスを経ずにプラットフォームでゲームを配信し、中国のゲーマーを取り込むことができる。将来はSteamの中国版も出ることになっており、リリース前には完全なライセンス認可が必要で、40タイトルのリリースが発表されている。つまり、厳格なシステムにも関わらず、多くのゲームがプレイされ、ライセンス認可されていないゲームに多額のお金が流れていることになる。

20166: モバイルゲームの認可が必須となる
20184月〜201812: 9ヶ月間のゲーム認可凍結
20194: 新規のゲーム認可プロセス

20194月に発表された改正後の方針では、毎月認可するゲーム数を制限している。さらに、ポーカーや麻雀などの特定ジャンルの取り締まりと低品質のゲームやコピーゲームなどのライセンスも停止されている。2020年以降のライセンス数が減ると弊社が予測するのは、これが主な理由になっている。

2019年に認可された,185の輸入タイトル中、139がモバイルゲームで、32PC &ウェブゲーム、14タイトルがコンソールゲームだった。 現在、毎月1バッチ分の輸入ゲームが認可されているが、認可される中国製ゲームは複数バッチ分である。各バッチには平均でおよそ23の輸入ゲームが含まれており、最大バッチは20198月の38ゲームの認可だった。12月に認可された輸入ゲームは一つもなかった。

2019年の月毎の輸入ゲーム数

中国へのゲーム輸入数第1位:日本

Niko Partnersの分析では、中国に輸入しているゲームタイトルがもっとも多い国は日本であることがわかった。2019年の輸入の3分の1は日本のゲームだった。日本で開発されたゲームタイトルは2017年の輸入タイトルでもトップの割合を占めていたが、2019 年は日本が最大のタイトル数で他をリードしている。これは米国や韓国などそれまでトップを走っていた国の認可タイトル数が低下したことと、ゲーム認可を受ける国の幅が全体として広がったことに起因する。中国への輸出ではカイロソフトが日本企業のトップで、8タイトルがライセンスを受けており、SNK、カプコン、スクウェア・エニックスがそれぞれ4タイトルでこれに続いている。

『Hunter x Hunter』や『Naruto: New Generation』、『僕のヒーローアカデミア』などの人気アニメゲームが日本のテーマとして人気を得た。その他には コナミの『ウイニングイレブン(PES)』のモバイル版、(PESはずっと以前から中国で人気のシリーズ)とコーエーテクモの『三國志演義(ROTK)』など、日本のデベロッパーが提供する人気の高いオリジナルIPのゲームが挙げられる。また、TencentがNintendo Switchハードウェアの流通を認可されたことで、このゲームが初の任天堂のライセンス認可となった。2020年は、特に任天堂がファーストパーティーのタイトル8件のライセンス認可申請をすることを明確にしているため、引き続き日本からの輸入が独占的になると予測される。

中国への輸出トップ10位の日本のゲーム会社

中国へのゲーム輸入数第2位:米国

2019年、米国は17タイトルを中国に輸出し、2番目のタイトル輸出数を誇り、2009年からの合計では200タイトルが認可されている。

2019年にライセンス認可を受けた米国ゲームの大半はスポーツ、レーシング、シミュレーション、ストラテジーなどカジュアルやミッドコアなジャンルである。『コール オブ デューティ』モバイル版や『H1Z1、『フォートナイト』のようなコアゲームはまだ認可に至っていない。『フォートナイト』は興味深いケースで、タイトルは2018年初頭に申請され、その後7月にオープンテストが始まったが、 収益化の認可はまだ下りていない。中国は人気を博した米国タイトルのライセンス認可をしておらず、その理由が定かではないところが気にかかる。

2019年にライセンス認可された米国の上位ゲームタイトル

中国へのゲーム輸入数第3位:韓国–2017年以降はその地位を失う

韓国は過去11年間に合計158タイトルを中国へ輸出しており、第3位にランクインしている。先にも述べたが、『リネージュ2レボリューション』や『PUBG』などの非常に人気の高いゲームが世界市場でもてはやされているにも関わらず、2017年と2018年にライセンス認可された韓国タイトルは一つもない。韓国でヒットした『アラド戦記(Dungeon and Fighter)』 や 『クロスファイア』は中国でも依然として人気が高く、長年その人気を保っている。韓国コンテンツ振興院によると、2017年の韓国のゲーム輸出の60.5% は中国が占めており、韓国企業にとって中国市場がいかに重要かわかる。この数字は2018年には30 に下がった。これは韓国のゲームデベロッパーが中国以外の市場で成功したことに起因するが、ここ2年間に中国では新しい韓国ゲームが一つもリリースされていないことも原因になっている。

 

ゲーム認可が停止になった理由として、2017年の中韓の政治問題が一つの可能性として考えられる。それ以後、中国はゲーム、テレビ番組、音楽商品などの韓国のエンターテインメント商品が自国に入ってくるのを公式にではないが阻止するようになった。両国の関係は2019年に入って改善し始め、最近になって中国政府の文化観光部は2本の韓国ドラマの国内放映を許可している。こうした関係強化があったにも関わらず、 中国でゲームを販売できない韓国企業は多大な影響を被っている。

 

これは、収益化が許可されなかったため、『リネージュ2レボリューション』と『PUBG』とモバイル版『PUBG』を販売できなかった Tencent にとって大きな痛手となった。Tencentはモバイル版『PUBGをアプリストアから外すことを余儀なくされ、収益化ライセンスを取得できた自社開発のバトルロイヤルゲーム『Peacekeeper Eliteを販売することになった。 Tencentは2020年に韓国で開発した『アラド戦記』モバイル版をパブリッシュする予定だと発表しているが、ゲームの正式な禁止も発表されておらず、今後いつ韓国ゲームのタイトルが中国でライセンス認可されるのかもわかっていない。

年別の韓国から輸入されたゲーム数

中国では国内の通信インフラストラクチャを保護する法律により、中国でパブリッシュされるゲームはすべて中国が株式の過半数を所有する会社が運営することになっている。中国のパブリッシャー/オペレーターの中ではTencent とNetEase が最大手のゲーム輸入企業で、2019年にはそれぞれ17タイトルを輸入している。この市場では、iDreamsky、East2West、そしてOriental Pearlも大きな担い手だが、3社とも輸入ゲーム業界では比較的歴史の浅いオペレーターだ。Oriental Pearlは 中国でPS4と Xbox Oneゲームのパブリッシュ権を握っているため、非常に影響力のあるプレイヤーだ。

ジャンル別では、ロールプレイングゲーム、パズルゲーム、シュミレーションゲームの認可が最も多かった。これらの数字は、モバイルゲームの中でも最も人気の高いものを反映しており、輸入市場においてはモバイルゲームのタイトルが引き続き力を保っていることを示している。これは凍結前にカジュアルゲームやシューティングゲームタイトルの輸入数が減ったこととも相関性がある。2019年に輸入されたゲームの17 はIPを輸入し国内で開発したものだった。輸入IPはゲーム認可が一時中断される前に比べて高くなっており、中国のゲームデベロッパーの自信の高まりと、ゲーム市場における輸入IPの重要性を示唆している。

2020年は、毎月20から30タイトルの割合で輸入タイトルが認可され、今年中に240から360 の輸入タイトルが認可されると予測している。2020年初頭の 通商摩擦の解消は米中の貿易関係の改善を示唆し、その結果米国ゲームの認可数が増えるかも知れない。人気の高いIP Tencentと任天堂の強固な関係性により、2020年は引き続き日本が認可リストのト